忘れ物をして何が悪い 2
忘れ物をして何が悪いと思っている。
前述したように、僕はブリュッセルのエアポートにかなり重要なカードが入った財布を置いてきたが、目の前の豚骨ラーメンを食べるほうが優先順位が高かった。
財布を無くしも堂々と振る舞えるのは、豊富な経験があるからだ。僕はあらゆる場所に財布を忘れてくる。
温泉のロッカー
電車の椅子
友達の家
年に10回は財布を置いて去るのだが、必ずといっていいほど財布は僕の元に帰ってきた。しかもまったく手をつけられていない状態で。
施設に忘れた場合は、当日か翌日に電話をして確認する。すると大体の場合忘れ物として保管されており、直接受け取りにいくか、着払いで郵送してもらえばいい。
電車に忘れるとちょっと面倒臭い。地下鉄か否か、特急か否か、会社はどこかで連絡をする場所や保管されている場所が異なるからだ。この場合も、骨が折れる作業ではあるが正しい処理を行うと、無事に財布は手元に帰ってくる。
僕が何を言いたいかというと、日本国内であれば財布を捜査して受け取るためのシステムがかなり円滑に作動しているので、本人に最低限の語学能力、情報リテラシー、時間とお金があれば、財布の心配をそこまでしなくてもいいということだ。懐手で口笛を吹きながら歩いてればいいのだ。
続く。
忘れ物して何が悪い
忘れ物をして何が悪いと思っている。
僕の母親はとても神経質で(もしかしたら過保護なだけだったのかもしれない)いつも僕の持ち物を確認してくる。
お財布は持ったか。
チケットはあるか。
明日の時間は調べたのか。
もう、あきあきしてくる。何度同じことを聞いてくるんだろう。そう簡単に財布を忘れるもんですかとゲンナリする。
僕は財布を無くした。ブリュッセルのエアポートに。キャッシュカード、運転免許証、保険証、学生証、モンベルの会員カードなど、見てわかるようにないとずいぶん困る重要なカード類をいきなり失ってしまったのだ。
これは意外なことかもしれないが、僕はいたって冷静だった。ベルギーの空港に財布を置いてきたことを、乗り継ぎ地のバンコクで気がついたのだが、僕はそんなことよりも果てしない空腹を満たすことのほうが重要だった。
僕は財布を無くしたことに気づいた直後に博多ラーメンを扱う飲食店を見つけて感激し、真っ先に豚骨ラーメンを食べたのだ。(馴染みのある豚骨スープに加えて、バンコク特有の謎の甘みを感じた。味玉にいたっては謎の甘い何かにしっかりと付け込まれていた。もしかしたら彼らは醤油という存在を知らないのかもしれない。え、豆から調味料が作れるの、ワーオなんて言うかもしれない。そんな豚骨ラーメンを僕はサーブされたのだ。)